10月CPI下落を受けてドル円の方向性は今後どうなるのか

UPDATE:2022/12/21

 2022年11月10日、米国の重要指標の1つであるCPIが予測値よりも下回ったことを受けて、米ドル円レートがその日の高値146.5円から140円台前半にまで大幅に動き、翌日には140円を割り込みました。

 これによって、一時150円を上回った米ドル円の急激な円安は終息し、今後米国の利上げが減速するという見方も出てきています。

 しかし、果たしてこの数値だけで、米国の金融引締は、本当に方向性が変わることがあるのでしょうか。

そもそもCPIとは

 CPIとは消費者物価指数のことで、商品やサービスの価格が、過去のデータと比較してどう変動しているかを表す経済指標です。

 11月に発表された米国のCPIは、前年同月比で以下の通りとなりました。

予想値 発表値
CPI +8.0% +7.7%
コアCPI +6.5% +6.3%

 コアCPIとはCPIからエネルギーと生鮮食品を除いた数値で、気候や海外輸入で変動が起こりやすいこれら2つを除いたコアCPIのほうが、市場においてはより注目されます。

米国雇用統計とは?バイナリーオプションでも重視すべき指標か?

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 さて、雇用統計の記事でも触れたとおり、重要指標の発表時、予想との乖離が見られる場合にはレートが大きく動くことがあります。今回の6円もの下落も、CPIが予想値よりも低かったことで引き起こされたものです。

 前年比、及び前年同月比のCPIとコアCPIは、米国のものは毎月15日前後、日本では19日が含まれる週の金曜に発表されます。

FRBの見解

 このCPIの結果について、連邦準備理事会(FRB)はどう捉えたのでしょうか。

 FRB理事は14日、大まかに以下のように発言しています。

  • CPIは一定期間の動向を見る必要がある
  • 物価の下落はいいことだが、継続が必要である
  • 何れにせよインフレ率7.7%は高すぎる

 この発言から一目瞭然ですが、一時的な下落だけで根本的な金融政策を変更する可能性は非常に低く、むしろ7.7%という高インフレを解消するため、引き締めは継続されると考えられます。

 事実として、FRB理事ウォラー氏は、「金利は当面高水準に」とも明言しています。

市場の過剰反応か

 確かに予想値と比べれば、その数値は低い値を示しました。しかしながら今回の値動きは、市場の過剰反応といってもいいのではないでしょうか。

 予想より低いといっても前年同月と比較して明らかな高止まり。米国経済の高インフレ状態に変わりはなく、冷静に振り返れば利上げの継続が当然の選択肢と考えるべきでしょう。

 勿論、今後のCPIも継続して低下していくのなら、利上げの減衰も視野に入ります。しかし、少なくとも今回の数値は緩やかなインフレ(マイルド・インフレ)には程遠く、これだけで利上げの是非を問うにはあまりにも早計です。

緩やかなインフレとは

 マイルド・インフレ、あるいはクリーピングインフレーションとも呼ばれます。インフレ率は年に2~3%の持続的上昇を見せ、経済が健全に成長している際に見られるとされています。

 日本においても、物価上昇率2%を目標とした金融政策が取られています。

金利差を見れば未だ円安進行止まらず

 現状、アメリカのインフレ抑制も、日本の安定した物価上昇率も達成されていません。それすなわち、現在の経済政策は当面続くと考えられるということです。

 考慮すべき点があるとすれば、残り5ヶ月を切った黒田日銀総裁の任期。黒田総裁の後任が現在の経済政策を継続実施するのか、それとも大きな転換を見せるのか。少なくとも黒田総裁は、11月10日の国会にて「再任されたいとかそういう希望はまったくない」と答弁しており、続投して緩和継続という道筋は、今のところはないようです。

まとめ

  • CPIは物価の上昇率を示す重要指標
  • 10月CPIは確かに予想を下回ったが基調としては依然高止まり
  • 経済政策は当面変わらないが、4月の日銀総裁任期満了前後に要注意

 バイナリーオプションの観点では、一連の値動きはそれほど関係はないことかも知れません。以前から申し上げているとおり、大きな変動が前もって予測され、かつその方向性が予測できない場合には、取引は行うべきではありません。

 ただ、超短期のバイナリーオプション取引であっても、全体の方向性は把握しておけば何かと役に立つこともあるでしょう。その方向性を定める指標の1つとして、CPIには要注目です。

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