国内と海外でバイナリーオプションはこれだけ違う!
UPDATE:2022/06/27
バイナリーオプションを提供する業者には、国内業者と海外業者が存在します。
国内業者は日本国内に拠点を置くバイナリーオプションのブローカー。海外業者は国外に拠点があるブローカー。極めて簡単にその2つの違いをまとめるとすればそういうことになりますが、では、具体的にはどの程度違いがあるのでしょうか。
今回は、バイナリーオプションの国内業者と海外業者の違い、取引業者を選ぶ際の注意点など、実際にバイナリーオプションに挑む前に把握しておくべきポイントをお話します。
そもそもバイナリーオプションがよく分からないという方は、こちらを御覧ください。

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国内バイナリーオプション業者は規制されている
現在、金融庁の認可を受けた国内業者が提供するバイナリーオプション取引は、2013年11月に施行されたルールが適用されています。
このルール≒規制内容が、国内と海外のバイナリーオプション業者の最大の違いです。
具体的にどう違うのかは次項にて説明いたしますが、何故、バイナリーオプションは規制されてしまったのでしょうか。
何故規制されたのか
この規制は、日本独自に設けられたものですが、元々は、国内のバイナリーオプション業者も、海外の業者と同じルールで運営されていました。
それが一変したのは、2013年。順を追って見ていきましょう。
- 2013年7月3日
- 「金融商品取引業に関する内閣府令」及び「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部改正が公布される。
- 2013年7月18日
- 上記に伴い、一般社団法人金融先物取引業協会が、個人向け店頭バイナリーオプション取引業務取扱規則、並びにそのガイドラインを制定。
- 2013年8月1日
- 前述の内閣府令による公的規制の実施。これに伴い、規制前のバイナリーオプションへの新規参入の停止。
- 2013年11月30日
- 国内における規制前ルールでのバイナリーオプション停止。
何故規制されることになったのかについては、BO取引業務取扱規則のガイドライン中に、こう記載されています。
そもそも、オプションは定められた権利行使期限(満期)において、オプション自体が消滅するため、原資産のように顧客が長期にわたって保有するには適していない金融商品であり、さらには、極めて短期間に満期となるオプションを投機的な取引に用いるならば、いわゆる賭博との境目が無くなり、金融商品取引全体の発展に好ましからざる影響を与える可能性があるとの意見も見られるところとなっています。
なーんでこういう公的な文書って読みづらさを優先したような文章ばっかなんでしょうか。
要するに、『オプションの短期取引はほとんどギャンブルと一緒なので禁止します』ということで、国内に拠点を置く金融商品取引業者は、従来のルールでバイナリーオプション取引を提供できなくなりました。
極めて短期間に満期となる=30秒や1分などで決済されるオプションが問題となっただけであり、バイナリーオプションそのものがギャンブルと同様とされたわけではありません。

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これ以降は、特に何か追加で規制されるということもなく、取引されています。
国内と海外のバイナリーオプションの違い
それでは、この規制によって、国内と海外のバイナリーオプションに、どの程度の違いが生じたのでしょうか。
決済までの時間
バイナリーオプションが規制される原因の1つとなったのは、満期までが非常に短いオプションの取引。当然、そこは規制の対象となりました。
現在、国内で認可を受けたバイナリーオプションは、取引開始から満期までの時間を、最低でも2時間設けなければなりません。
この2時間の中で、任意のタイミングでエントリーするのが、国内のバイナリーオプション取引です。
海外のバイナリーオプション業者では、満期までの時間はかなり自由に選べます。
元々、バイナリーオプションは短期取引による利益の獲得が魅力の取引方法です。国内の規制に該当しない海外バイナリーオプションでは、満期まで1分や3分、5分といった取引時間が用意されています。
ハイロードットコムなど、一部の業者は30秒取引を導入しているところもあります。
また、これらの短期的な取引の場合、満期までの時間は、エントリーした時点からカウントする場合が多いです。
5分で満期の短期取引に12時にエントリーした場合、決済は12時5分です。
取引方法の違い
通貨関連店頭バイナリーオプションの権利行使価格は、判定時刻の2時間以上前に決定します。原則として、取引期間(時間)中の権利行使価格は固定します。お客様の注文の都度、注文時のアットザマネーを権利行使価格とする取引の仕組みを利用することはできません。
金融先物取引業協会ではこのように規定しています。どういうことかというと……

海外バイナリーオプションの取引方法は、上の画像のように決済のタイミングで、エントリーした時点の価格よりも上がっているか下がっているかを予測します。これを『ハイロー取引』や『ハイロー方式』などと呼びます。
これが国内になると……

と、予め決められた価格のラインを上回るか下回るかを予測する『ラダー型』の取引となっています。
ラダー型以外にも、決済時に価格が一定の範囲内に収まるかどうかを予測する『レンジ型』を採用しているところもあります。
これにより、従来は単純に現在の価格よりも上がるか下がるかを考えればよかったバイナリーオプション取引が、現在の価格がどこまで動くかを予測する取引へと変化したのです。
ポジション代やペイアウトの違い
海外のバイナリーオプションでは、ポジションの購入額は、上限や下限に収まるなら、こちらで自由に設定することが出来ました。
ですが国内のバイナリーオプションでは、ポジションを得るのに必要な金額はコチラで変更できません。それどころか、購入金額は、おおよそ50~1,000円の幅で、現在のレートや判定までの残り時間に従って変動します。
その代わり、国内の場合だとポジションを複数枚購入することで額を増やせますので、一回の取引で1,000円以下しか使えないというわけではないんですが。
また、国内バイナリーオプションでは、ローにエントリーするかハイにエントリーするかでもポジション代が変わります。
具体的には、現在のレートが、判定レートに選んだ数値よりも高く、下がる可能性が比較的低い場合はハイのポジション代は高くなり、ローのポジション代は安くなります。
要するに、満期までにそこに収まる可能性が高ければ高いほど、ポジション代も上がり、可能性が低いほど安くなるということです。
ペイアウトに関しても、国内と海外のバイナリーオプションでは随分違います。
海外のバイナリーオプションのペイアウトは、購入した金額に予め決められたペイアウト倍率を掛けたもの。ペイアウト倍率が1.9倍なら、1,000円購入で1,900円のバックがあります。勿論、予測を外した場合は購入分の損失です。
国内だとどうでしょう。国内のバイナリーオプションの場合は、1つのポジション=1Lotに対するペイアウトは固定です。大半の国内バイナリーオプションでは、1,000円/1Lotとなっています。
ですので、もし500円の予測が当たった場合は500円の利益、900円の場合だと100円の利益ということになります。1Lotの金額は予測が当たりやすければ当たりやすくなるほど高額になるため、その分利益は出づらくなっています。
利益にかかる税金
国内外どちらの場合においても、バイナリーオプションの利益には税金がかかりますし、当然確定申告は必要です。ですが、かかっている税金がどういう種類になるのかという点については、国内バイナリーオプションと海外バイナリーオプションとでは違いがあります。
簡単にまとめると、以下のようになります。
国内BO | 海外BO | |
---|---|---|
税の種類 | 申告分離課税 | 総合課税 |
税率 | 20.315% | 5~45% |
これが具体的にどう違うのか、それぞれのケースに分けて見ていきましょう。
海外バイナリーオプションの場合
海外バイナリーオプションでの利益は、雑所得として扱われ、総合課税に分類されます。
総合課税は他の所得と合算して税額が決まります。例えば、会社員として給与所得400万、海外バイナリーオプションで年間100万の利益が出た場合、合計した500万に対して所得税が発生します。
所得税はこの合計額に応じて税率が上昇します。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円~ | 45% | 4,796,000円 |
加えて、ここに『住民税』と『復興特別所得税』がかかります。
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興のために課されるようになった税金で、令和19年12月31日まで、所得税の2.1%分が追加で徴収されています。
住民税は、地域によって多少の違いはありますが、ほぼ一律で10%。仮に、課税対象となる給与所得が400万、海外バイナリーオプションで得た利益が100万として、経費が5万かかったと仮定すると、
課税対象所得=400万+100万-5万=495万
税額=4,950,000×(0.2+(0.2×0.021)+0.1)-427,500=1,078,200円
※100円未満は切り捨て
となります。
上記計算で用いた『課税される所得金額』とは、給与収入から給与所得控除を引いた額で、以下の計算式により求められます。
給与収入 | 控除額 |
---|---|
~1,625,000円 | 550,000円 |
1,625,001~1,800,000円 | 収入×40%-100,000円 |
1,800,001~3,600,000円 | 収入×30%+80,000円 |
3,600,001~6,600,000円 | 収入×20%+440,000円 |
6,600,001~8,500,000円 | 収入×10%+1,100,000円 |
8,500,001円~ | 1,950,000円 |
上記計算で用いた『給与所得400万』は、これに当てはめると、年収は555万円となります。
国内バイナリーオプションの場合
国内バイナリーオプションにおいても、かかる税金は大きな区分では所得税です。
しかし上記の通り、国内バイナリーオプションの税の種類は『申告分離課税』となっており、合算して計算する総合課税とは異なります。
申告分離課税は、2021年9月現在において、一律で20.315%の税率。つまり、先程の例で考えると、
給与所得の所得税=4,000,000×(0.2+(0.2×0.021)+0.1)-427,500=789,300円
BOの所得税=(1,000,000-50,000)×0.20315=192,900円
税額=789,300+192,900=982,200円
となります。
申告分離課税の内訳は以下のとおりです。
税率 | |
---|---|
所得税 | 15% |
復興特別所得税 | 15%×2.1%=0.315% |
住民税 | 5% |
また、国内バイナリーオプションでは、一定期間の損益を相殺する『損益通算』と、最大3年間、損失を繰り越せる『繰越損失』が可能です。
海外バイナリーオプションでは、これらは利用できません。
確定申告が不要の場合
給与所得とは別に収入がある場合、確定申告をする必要があります。
当然、バイナリーオプションで得た収入に対しても行わなければなりませんし、もししなかった場合、税務調査が入ったり、追徴課税が発生し、最悪財産が差し押さえられます。
しかしながら、以下の条件のいずれかに該当する場合、確定申告は不要です。
- 給与の収入金額が2,000万円を超えず、給与以外の所得金額が20万円未満
- 扶養に入っていて、年間の合計所得が基礎控除48万円以下
上記条件に当てはまれば確定申告は必要ありませんが、別途住民税の申告は必要です。
国内は初心者は取引できない?
海外バイナリーオプション業者での口座開設は、その業者によって多少異なりますが、これまでの投資・投機経験は問われません。
しかし、規制後の国内バイナリーオプションに取り組むためには、一定の知識と取引経験が必要です。
知識の確認
バイナリーオプション取引を行うにあたり、必要と思われる基礎的な知識について、お客様のご理解の程をご確認いたします。バイナリーオプション取引を取り扱う会員各社では、ホームページなどを通じて、バイナリーオプション取引にかかる基礎的知識の学習コンテンツをご提供いたします。取引のお申込み前にご自身で基礎的知識をご確認いただくことをお勧めします。なお、基礎的知識が十分でないと判断した場合には、お取引の手続きを停止いたしますが、各社の学習コンテンツなどにより、基礎的知識を補完いただき、後日あらためて、取引開始のお手続きを進めてください。
取引経験
バイナリーオプション取引をお始めいただくには、原則として、あらかじめ流動性の高い金融商品やFX、有価証券オプション、商品先物などのデリバティブ取引について、一定程度の投資経験をお持ちであることが必要です。
つまり、一切投資経験のない初心者は、国内のバイナリーオプションに挑戦できないのです。
国内と海外どちらがオススメ?
日本国内に拠点を置くバイナリーオプション業者は、金融先物取引業協会に登録=金融庁に登録した業者です。
一方、海外の業者は金融庁に届け出ることなく、従来のバイナリーオプション取引を継続しています。
国内と海外、それぞれのバイナリーオプションを利用するデメリットから、どういう人がどちらに適しているのかを見ていきたいと思います。
国内業者の場合
国内のバイナリーオプション業者を利用するデメリットは、すでにお察しかと思います。
稼ぎづらいんです。
高いペイアウトも期待できない、そもそも判定までが長い、それ以前に初心者が参加できないと、規制の結果、ハードルが上がって旨味が下がったというのが、現在の国内バイナリーオプションです。
ただ、金融庁に届出済みということで、安全性は高いといってもいいでしょう。
金融庁のページにも書かれていますが、『金融商品取引法の登録を受けた業者と取引を行う場合であっても、その業者の信用力などを慎重に判断することが必要』です。
海外業者の場合
海外のバイナリーオプション業者は、金融庁に登録していません。
実は、日本国内に拠点をおいていない業者であっても、日本国内の人間を相手にするのなら、金融庁へ登録しなければなりません。
金融庁のバイナリーオプション取引にあたってご注意ください!のページに書かれているとおり、『無登録業者と取引した場合は、トラブルが生じても無登録業者への追求は極めて困難』、つまり、利用自体に違法性はないものの、完全な自己責任になります。
人気の海外バイナリーオプション業者である『ハイロードットコム』も『ファイブスターズマーケッツ』も、金融庁へは登録していません。にもかかわらず、日本人向けのサービス展開をしていることから、金融庁から警告も受けています。
もう少しだけ突っ込んだ話
海外バイナリーオプション業者が日本在住の人間を相手取って取引を行う際には、日本の金融庁への届け出が必要ですが、具体的に、どういった場合に日本向けサービスを提供していると判断されるのでしょうか。
1つは、日本語によるホームページを保有しているかどうか。これはすぐにお分かりいただけるかと思います。日本人が最も馴染みのある言語である日本語でサイトを運営している時点で、それすなわち日本人を対象とした取引を用意していると判断されます。
もう1つ、日本国内からの口座開設可否も基準の1つとされていますが、2022年6月現在、バイナリーオプションの環境を提供し、日本からも口座開設が可能な『IQcent』は、日本語のページが存在しないためか、金融庁からの警告は受けていません。
まとめ
- 国内バイナリーオプションは規制されている
- 海外バイナリーオプションは規制対象外
- 安全を取るなら金融庁に登録している国内業者
- 多く利益を出したいなら海外業者
さて、バイナリーオプションに関して規制が進んでいるのは、実は日本に限った話ではありません。
むしろ、取引すること自体は制限されていない日本は、世界的に見てゆるいといってもいいかも知れません。
2019年3月にはイギリスが、7月にはEU加盟国が揃ってバイナリーオプションを禁止し、かつてハイロードットコムが拠点をおいていたオーストラリアでも、2021年4月からバイナリーオプションが禁止されています。
アメリカは、自国内のライセンスを持つ、ブローカーが自国民に対してサービスを提供する場合にのみ、バイナリーオプションを許可しているようです。
……そう、実は、バイナリーオプションを禁止としている国のほうが多いのです。
その理由の多くは、日本国内で規制された理由と似ています。本来なら金融商品の取引として扱われるべきところ、その取引方法の単純さからギャンブル扱いされ、投資家を守るために、世界各国で規制が進んでいます。
……そう考えると、バイナリーオプションはあまりオススメできる取引方法ではないのかも知れません。
しかし、リスクを把握した上でしっかり取り組むのなら、取っ付きやすい取引というのも事実といえるのではないでしょうか。