フィボナッチリトレースメントはバイナリーオプションで本当に有用?
POST:2021/12/16
黄金比という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
1:1.618、あるいは0.618:1で表される黄金比と密接な関係にあるフィボナッチ数列。これを元にしたテクニカル分析手法があります。
今回はその、『フィボナッチリトレースメント』を解説。基本的な分析方法からバイナリーオプションへの応用まで、一気に取り扱います。
フィボナッチリトレースメントとは
フィボナッチリトレースメントとは、上昇トレンド中の一時的な押し目や、下降トレンド中の一時的な戻りを予測するテクニカル分析の手法です。
具体的にどのように分析するのかを説明する前に、まず『フィボナッチ数列』について触れていきたいと思います。
フィボナッチリトレースメントの『フィボナッチ』とは『フィボナッチ数列』のことを指し、『リトレースメント』は金融用語で『綾戻し』と呼ばれる、下落傾向から一時的に僅かに反発する現象を指します。
フィボナッチ数列とは
フィボナッチ数列を簡単に説明すると、『前2つの数字を足し合わせると次の数になる数列』のこと。具体的には、『0、1、1、2、3、5、8、13、21……』といった具合に、終わりなく続く数列となっています。
実際に、前2つの数字を足し合わせてみると、
- 0 + 1 = 1
- 1 + 1 = 2
- 1 + 2 = 3
- 2 + 3 = 5
- 3 + 5 = 8
- 5 + 8 = 13
- 8 + 13 = 21
- 13 + 21 = 34
- 21 + 34 = 55
- 34 + 55 = 89
となっています。更に、得られた結果で1つ前の数字を割ると、
- 1 / 1 = 1.000
- 1 / 2 = 0.500
- 2 / 3 = 0.667
- 3 / 5 = 0.600
- 5 / 8 = 0.625
- 8 / 13 = 0.615
- 13 / 21 = 0.619
- 21 / 34 = 0.618
- 34 / 55 = 0.618
- 55 / 89 = 0.618
※計算結果は小数点第3位で四捨五入
と、徐々に黄金比である0.618に近づいていくのが分かります。
逆に、1つ前の数字で計算結果を割ると、これもやはり黄金比である1.618に近づいていきます。
更に、2つ前の数字を割ると『0.382』に、3つ前の数字を割ると『0.236』にそれぞれ近似し、これらを『フィボナッチ比率』と呼びます。
フィボナッチリトレースメントの分析方法
フィボナッチリトレースメントでは、『フィボナッチ比率』を分析に用います。
フィボナッチ比率を用いるトレード手法には、フィボナッチリトレースメント以外に『フィボナッチアーク』『フィボナッチエクスパンション』『フィボナッチタイムゾーン』などがありますが、一般に金融関係でフィボナッチというと、フィボナッチリトレースメントを指します。
まず必要となるのは、直近の高値と安値を結ぶライン。その後、高値を100%、安値を0%として、0%、23.6%、38.2%、50%、61.8%、100%の水平線を、ローソク足チャート上に引きます。場合によっては、これらに加えて76.4%のラインを引くこともあります。

上図の黄色の線がそれぞれの数値のラインです。これらは下値支持線や上値抵抗線の役割を果たすことがあり、投資家が注目する価格帯となっています。
多くのチャートツールでは、高値と安値を決めてラインを引けば、自動的に各水平線が描画されます。
画像では、MT5の『挿入→オブジェクト→フィボナッチ係数→フィボナッチリトレースメント』で線を引きました。
フィボナッチリトレースメントのメリット
先述の通り、フィボナッチリトレースメントは、上昇トレンド中の一時的な押し目、あるいは下降トレンド中の一時的な戻りのタイミングを分析する手法です。
予測精度が高いと信頼しているトレーダーが多く、結果として、押し目買い、戻り売りなど、フィボナッチリトレースメントを利用した売買が増え、同じ注文が同じ価格帯に集中する可能性も高まります。
反発や反落で特に注目されるのは『38.2%』、『50%』、『61.8%』のライン。この3点でレートが動くパターンが多い傾向にあり、この付近で売買ポイントを探るのに適しています。
フィボナッチリトレースメントのデメリット
しかしながら、フィボナッチリトレースメントの運用には、正しい高値、安値の見極めが重要となります。
また、複数のフィボナッチリトレースメントを過去の動向と照らし合わせ、反転の回数や値動きなどをしっかりと分析できなければ、誤った売買ポイントでエントリーしてしまう恐れがあります。
バイナリーオプションでフィボナッチリトレースメントを使う
さて、このフィボナッチリトレースメントですが、バイナリーオプションでは積極的に使わなくてもいいテクニカル分析と考えられます。
フィボナッチリトレースメントは、他の指標での分析と組み合わせることで、より正確な売買ポイント=エントリーポイントが探りやすくなります。しかし、単体では、本当にそこで一時的に反転するかどうかは、判断が難しいところ。
RSIの数値やボリンジャーバンド上のローソク足の位置からの判断により予測精度を上げられますが、それでも、どの程度先まで反発が続くかは予測困難です。
ただ、これはあくまでエントリーポイントとして見たときの話。他の使い方では、どうでしょうか。
反発するタイミングを避ける目的で
フィボナッチリトレースメントの前提条件は、トレンド相場が発生している状況下。そして、バイナリーオプションで勝ちやすいのは、トレンドに乗った順張りの取引です。
しかし、そのトレンド相場の中にも、細かい上がり下がりが存在します。場合によっては、決済のタイミングで反発し、損失となることも……そんなときにこそ、フィボナッチリトレースメントの出番です。
フィボナッチリトレースメントで引いたライン付近、あるいは、決済のタイミングでラインに到達しそうなときは取引をしない、ラインを突き抜けたのを確認してからエントリーするなど、バイナリーオプションでは、不意の騰落判断に、フィボナッチリトレースメントは有用であると考えられます。
まとめ
- フィボナッチリトレースメントはフィボナッチ比率を用いる分析手法
- 戻り売り、押し目買いのエントリーポイントを探るのに有用
- ただし、バイナリーオプションでは必須ではない
フィボナッチリトレースメントは、どちらかというとFXで最も活躍する指標ではないでしょうか。少なくともバイナリーオプションでは、あえて利用する意義はなさそうです。
ただ、フィボナッチリトレースメントを使うことで、ランダムと思っていた戻りや押し目に規則性を見いだせるかも知れません。もちろん全ての騰落が予測可能になるわけではありませんが、1つ、試してみては如何でしょうか。