想定しうる最大損失から見るバイナリーオプションとFXの比較

UPDATE:2022/12/22

 バイナリーオプションにせよFXにせよ、全ての取引がうまくいくとは限りません。必ずどこかで損失が発生します。

 一般にバイナリーオプションのメリットを紹介する際に、当サイトを含めて『FXは理論上損失が無限大、バイナリーオプションはポジションを建てた時点で最大の損失額は決まっている』としています。これはひとつの真実ではありますが、若干誇張しているのも確かです。

 どういうことなのかを、順を追って説明いたします。

FXにおける損失とバイナリーオプションにおける損失

 すでにご承知のことと思いますが、バイナリーオプションで発生しうる最大損失は、ポジションを建てた際のオプション料です。これを上回る損失が生じることはなく、口座残高を超えることは絶対にあり得ません。

 FXは、先述のとおり、最大損失は理論上無限大です。であれば、口座残高以上の負債を抱え込んでしまう可能性もあります。

 しかし、現実にそういったことは、そう起こることではありません。

利用者を守るための強制ロスカット

 FXには、『ロスカット』というシステムがあります。これは、口座の証拠金維持率が、証券会社によって定められた数値を下回った際に、その含み損を強制決済、損失を確定させるものです。

 仮に、ドル円において以下のような条件の買い建玉があるとします。

数値
口座残高 10万円
レバレッジ 25倍
建単価 135円/ドル
数量 1万ドル
必要維持率 100%

 このときの必要証拠金は、手数料を考慮しない場合135✕10,000/25=54,000円となります。口座残高がこの金額に達した時点で強制ロスカットが入り、損失46,000円が確定します。

 この状況が生じるのは、46,000/10,000=4.6円価格が下がったときで、135-4.6=130.4円/ドルがロスカットラインとなります。

 このシステムは、一見利用者に強制的に損を被らせるものであるように感じられるかも知れませんが、実際には、損失が無限に膨らまないように利用者の資産を守るための仕組みです。

 ……ただし。この強制ロスカットは、あまりにも急激な価格変動に対処できない場合があります。その際には、ロスカットラインを大きく超えて損失決済が行われることになります。

どの程度の値動きで同額の損失となるか試算

 この強制ロスカットを考慮した状態で、実際にFXのほうがバイナリーオプションよりも損失が大きくなるのか、条件を設定して試算してみたいと思います。なお、いずれの場合も、買い建玉保有時と致します。

 まずはバイナリーオプション側の取引ルールから。

数値
口座残高 10万円
オプション料 5,000円

 今回は『損失が発生した場合のシミュレート』ですので、ペイアウト率の条件は設定していません。何でしたら、バイナリーオプション側の設定には口座残高も考慮する必要はありません。

 では、FX側の取引ルールはどう仮定するかというと、強制ロスカットとなる証拠金維持率を100%と仮定し、そこから逆算したいと思います。

 そのための基本設定として、

数値
口座残高 10万円
建単価 135円/ドル
レバレッジ 25倍

 としました。

 上記条件の元、5,000円で強制ロスカットとなる通貨数量xは、必要証拠金が95,000円となるので、x=95,000✕25/135。これによりx≒18,000通貨取引時に0.278円ほど値下がりすると、約5,000円での強制ロスカットが発生します。

 なお、このときの実効レバレッジは24.3倍と非常にハイリスクなものとなっており、あまりにも無謀な取引であると言わざるを得ません。

 FXにおいては、実効レバレッジは高くても10倍程度が、安定して取引できる範囲であるとされています。

 では逆に、FXの実効レバレッジを10倍程度に抑えた場合、どうなるでしょうか。

 基本的なルールは上記どおりとして、実効レバレッジ10倍でポジションを建てる場合、取引量は7,000通貨程度(正確には約7,407通貨ですが、多くの証券会社が最少取引量を1,000通貨としていることから、四捨五入しています)。この場合における証拠金維持率100%の金額は37,800円。このロスカットラインに達するには、約8.886円の下落が必要です。流石にこれほどの値動きが一瞬で起こることは考えづらいでしょう。

 他方、口座残高10万円で、この最大損失である62,200円を、バイナリーオプションで一括で建てるのは、やはり異常なまでに高いリスクを取っているといえます。

結局どっちがいいのか

 バイナリーオプションは、決済時刻にレートがどうなっているかのみを参照し、その道程においてレートがどう動いていたかは関係ありません。仮に、一時的にレートが0.5円下落したとしても、決済時刻にポジションを建てたときよりも0.01円でも上回っていればこちらの勝ちとなります。

 しかしFXの強制ロスカットは、例え一瞬でもロスカットラインに到達してしまうと、その時点で決済されてしまいます。上記例の0.28円程度の値動きは往々にして起こり得るもので、場合によってはエントリー直後にロスカットされる可能性も否定できません。よって、限界ギリギリのハイレバ取引を行うよりも、バイナリーオプションのほうが低リスクで取引できると考えられます。

 逆に、バイナリーオプションで建てるポジションに対し、1つのポジションに大きな額をかけるのなら、低レバレッジのFXに挑んだほうがリスクは軽減されます。バイナリーオプションでは、予測とは反対方向に値動きしたまま決済時刻を迎えれば、問答無用でオプション料を失います。が、低レバFXなら、将来的に予測した方向に動くことが見えているのなら、そのまま建玉を維持し続けることが可能です。

 結論としては、リスクをどう取るかによって、バイナリーオプションとFXどちらがよりよい資産運用手段かが変わってくる、というところに落ち着きます。

まとめ

 今回はあくまで『起こり得る最大の損失』という観点からの試算でしたので、それぞれの場合における発生しうる利益や、FXの損切り、バイナリーオプションの転売は考慮外としています。

 何にしても、FXにせよバイナリーオプションにせよ、リスクのとりすぎには要注意です。

新着記事

前のページに戻るトップに戻る