米国雇用統計とは?バイナリーオプションでも重視すべき指標か?

UPDATE:2022/04/21

 ファンダメンタル分析の中でも、殊更重要視される指標が、米国労働省が発表する雇用統計です。

 世界最大の経済大国であるアメリカ、その通貨たる米ドルは、世界の基軸通貨としても抜きん出た取引量を誇り、その価値に直接的な影響を及ぼすアメリカ経済は、ひいては世界経済に与える影響も少なくありません。

 今回は、バイナリーオプションとはやや縁遠い、しかし活用するとしたら最有力のファンダメンタル分析の要素として、この米国雇用統計をご紹介。その中でも、特に『非農業部門雇用者数』『失業率』について詳細に触れ、バイナリーオプションでの活用法を見出したいと思います。

 ファンダメンタル分析については下記をご参照ください。

ファンダメンタル分析とは?バイナリーオプションでも通用するか?

ファンダメンタル分析とは?バイナリーオプションでも通用するか?

雇用統計とは

 雇用統計とは、毎月第1金曜日に、米国労働省が発表する、雇用に関する経済指標の総称。調査対象は全米の企業や政府機関などで、

  • 失業率
  • 非農業部門雇用者数
  • 建設業就業者数
  • 製造業就業者数
  • 小売業就業者数
  • 金融機関就業者数
  • 週労働時間
  • 平均時給

 など、十数項目ものデータが発表されます。

 これらの内、『失業率』『非農業部門雇用者数』は、経済≒米ドルの価値に直接的な影響が強く、連邦公開市場委員会『FOMC』の金融政策の方向性にも影響を与えます。

 雇用統計の数値は、経済ニュースの他、Yahoo!ファイナンスなどで確認できます。

非農業部門雇用者数

 米国雇用統計の中でも、特に重要視されるのが、この『非農業部門雇用者数』です。

 読んで字の如し、農業部門に属さない事業所に雇用されている労働者の数を示すもので、自営業や農業従事者を除いた、約40万社の給与支払い帳簿を基に集計されます。

 これは全米の約1/3を網羅するとされています。

何故農業従事者は除外するのか

 ところで、何故農業部門はこの統計に含まれないのでしょうか?

 これについては、農業の特性が影響しています。農業は、天候や収穫時期など、様々な要因で従事者数の変動が激しく、指標として見るべき、市場での労働人口を見るのには向いていません。そのため、農業部門はこの統計から除外されているのです。

 農業従事者の統計自体は、雇用統計自体には含まれています。あくまで、数ある雇用統計の中から最重視されている『雇用者数』からは、除外されているだけです。

失業率

 これについてはあえて説明する必要もないと思われますが、失業者数を、失業者と就業者の合計=労働力人口で割ったもので、調査対象は約6万世帯。

 失業者が増えれば、それだけ国内の経済活動に打撃となるのは言うまでもありません。先述の『非農業部門雇用者数』に次いで、重要視される指標です。

 オークンの法則(あるいはオークンの経験則)によれば、アメリカの場合、失業率が約0.55%上昇すると、国内総生産(GDP)が1%減少するとされています。

 実際、毎月の発表において、アメリカの失業率は、2020年を例外として平均して右肩下がりとなっており、それに合わせるかのようにGDPは増加し続けています。

 ちなみに日本の場合はほぼほぼ横ばいで、GDPも同様。2010年までは、それまで世界第2位のGDPを誇っていましたが、それ以降は中国に抜かれ、2022年現在では大きく引き離されています。

バイナリーオプションにおける雇用統計の活用法

 バイナリーオプションでは、強いてファンダメンタル分析を行う必要はありません。テクニカル分析では突発的な事象には対処できないものの、ごく短時間で決済を迎えるバイナリーオプションで物を言うのは、やはりテクニカル分析を用いた論理的な分析です。

 しかし、この雇用統計に限っていえば、その限りではない場面もあります。

 例えば、発表が行われた直後、大きな値動きが生じたタイミングです。

 指標発表のタイミングは相場の動向予測が非常に困難となる上、乱高下する可能性も否定できません。

 雇用統計をバイナリーオプションで活用するのは非常にリスキーであると認識した上で、活用するかどうかをご自身でしっかりと判断してください。

事前の予想値は参考になる?

 さて、この雇用統計ですが、事前に数値の予想値が発表されています。これは市場の状況などに基づいた数値ですが、この予想値が参考になるかというと、正直なんとも言えません。

非農業部門雇用者数の推移

Yahoo!ファイナンス

 こちらは、2022年4月から数えた過去1年分の非農業部門雇用者数の結果値と予想値の推移です。予想値と近い結果を示したときもありますが、大きな乖離が生じている月のほうが多くなっています。

失業率の推移

Yahoo!ファイナンス

 失業率については大まかな流れは一致していますが、それでも予想から大きく離れた値を示すことも少なくありません。

 このことから、予想値はあくまで予想値として、実数とは異なるものだと認識したほうがよさそうです。

 ただ、雇用統計の予想値が全く役に立たないというわけでもありません。近い数値を示そうが、大きく離れた値が発表されようが、いずれの場合にも活用できる場面はあります。

予想値と大きく離れている場合

 予想値と結果値に乖離が見られる場合、発表のタイミングで為替が大きく動く可能性があります。

 事前に予想されたデータは、要するに市場のそれまでの売買やその他の要因の統括とも受け取れます。これが大きく外れたということは、それまで蓄えられてきた市場心理が否定されたということでもあり、それと同時に、新たな市場心理の方向性が形成されるきっかけであるともいえます。

 この動きが長期的にせよ一時的にせよ、短期で決済を迎えるバイナリーオプションでは絶好のエントリーチャンスといえるでしょう。発表された数値によってどちらに動くかは状況次第ではあるものの、しっかりと動向を見極めることができれば、一気に利益を伸ばすのも夢ではありません。

予想値に近い場合

 逆に、結果値が比較的予想通りの場合は、為替の変動は非常に緩やかです。目立った方向性が示されることもなく、それまでの為替の流れを踏襲した、高い流動性で推移します。

 ということはつまり、通常通りテクニカル分析がある程度有効な分析手法として機能するということです。為替の変動幅が利益の大小に影響しないバイナリーオプションだからこそ、着実な利益を積み重ねられる状況といえます。

 とはいえ、雇用統計の発表直前からレンジ相場が続いている場合、そのままレンジ相場が継続する場合もありますので、こちらもやはり、為替の動向には注意しておくべきでしょう。

雇用統計発表の前日や直前の動きに合わせる

 雇用統計の発表は、FXに取り組んでいるトレーダーや、外貨取引が多い輸出入企業にとっても重要なものです。そのため、雇用統計発表前には、ある行動パターンが見られます。

 それは、雇用統計発表による為替の急変動によるリスクを回避するための決済です。先述の通り、雇用統計の予想値と結果値に乖離がある場合、為替がそれまでの流れを無視して大きく動く可能性があります。FXの場合、状況次第ではこのことにより強制ロスカットが発生する可能性もあるため、利益が出ているうちに決済をしてしまうトレーダーは少なくありません。

 特に雇用統計発表当日の12時前後には、一時的にトレンド相場が形成されることもあり、そのタイミングでの順張りによるエントリーも、視野に入ってきます。

まとめ

  • 米国雇用統計は毎月第1金曜日に発表される最重要指標
  • 注視すべきは『非農業部門雇用者数』と『失業率』
  • 事前の予想値と違う場合は為替が大きく動き、近い場合は緩やかに推移する

 繰り返しになりますが、雇用統計の発表に合わせた取引は、非常にリスキーな行動です。普段から安定したバイナリーオプション取引ができている方は、そのままその取引を続けたほうがいいでしょう。

 また、上記で紹介した事例は、あくまでそういう傾向が見られるだけで、実際にそのタイミングでそう動くとは限りません。ですので、雇用統計に合わせた取引がオススメできるかというと、正直なところ全くオススメできません。

 それでも、新しい取引手法や大きな利益を求めて雇用統計を活用したいという場合は、雇用統計発表前後のレートの動きに注視し、試してみてはいかがでしょうか。

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