エリオット波動は上級者向け!バイナリーオプションで使えるのか?

UPDATE:2022/12/21

 ラルフ・ネルソン・エリオットという経済哲学者がいました。彼は、「マーケットには一定のリズムがある」という思考の元、ある理論を提唱しました。

 その理論とは、『エリオット波動理論』。正確には、彼を引き継いで研究を続けた人々によって、彼の死後30年経った1978年に発表されたとされています。

 このエリオット波動は、発表された時点では未来であった1980年代の値動きを予測し、高確率で的中させていたことから世間に浸透、今現在でも、重要なテクニカル分析の要素として利用されています。

 今回はこの『エリオット波動理論』について、バイナリーオプションでの利用可否も含めて解説いたします。

エリオット波動の概要

 エリオット波動の基本的な考え方は、『上昇5波下降3波』です。すなわち、

  • 上昇第1波→調整波→上昇第2波→調整波→上昇第3波
  • 下降第1波→戻し→下降第2波

 これを図示すると、以下のようになります。

エリオット波動の概略図

 更に、エリオット波動には別途ルールが存在します。

  • ①上昇第1波の調整波は、第1波の始点を下抜けることはない
  • ②上昇第2波が最も短くなることはない
  • ③上昇第2波の調整波が第1波の価格帯に割り込むことはない

 これを先程の図に書き込んでみると、

エリオット波動の概略図02

 この一連の流れを言葉でまとめると、「上昇するときはじわじわと上がり、下降するときは1度だけ反発して一気に下がる」ということになります。

元々は株式市場での話だが……

 そもそもエリオット波動は、株式市場に当てはめた場合の法則ですが、他の相場においても適合できるとされています。

 それそのものについては他のテクニカル分析も同様ですが、エリオット波動の場合は少々特殊です。どういうことかというと、大半のテクニカル分析のインジケーターが過去の値動きを元にしているのに対し、エリオット波動はフィボナッチ数列を用いているからです。

フィボナッチ数列とは

 フィボナッチ数列とは、別名を『黄金比』ともいい、人間が美しいと感じる比率を指します。

 具体的には、『0、1、1、2、3、5、8、13、21……』といった具合に、『隣り合う数字を足すと、次の値が現れる数列』のこと。数列に含まれる数字をフィボナッチ数と呼び、これは自然界に多く出現します。有名なものとしては、全てではないものの、花の花弁の数が当てはまります。

 ちなみに、人間の体もこのフィボナッチ数列でできているそうです。

 なお、同様にフィボナッチ数列を用いたインジケーターに、『フィボナッチリトレースメント』があります。こちらは以下の記事にて解説していますので、詳細はそちらにてご確認ください。

フィボナッチリトレースメントはバイナリーオプションで本当に有用?

フィボナッチリトレースメントはバイナリーオプションで本当に有用?

 同じフィボナッチ数を利用しているということから、エリオット波動とフィボナッチリトレースメントはよく併用されます。上昇波の反落ポイントをフィボナッチリトレースメントで割り出して、そのタイミングでの反落に合わせてエントリーしたり、どこまで上昇波が続くかを分析して、それより以前にエントリーしたポジションの決済タイミングを見出したり、活用法は様々です。

経験則に近い法則

 いってしまえばエリオット波動は、自然界に現れる秩序を人間の心理に当てはめ、パターン化したものです。そのため、他のインジケーターのようにややこしい計算式はなく、何らかの根拠も存在しない経験則としての側面が強い分析方法です。

 でありながら、相場にはしっかりと現れるため、注目度は高いインジケーターとなっています。

エリオット波動を描く

 エリオット波動の基本原則をもう一度見返してみましょう。

  • 上昇5波(上昇→調整→上昇→調整→上昇)と下降3波(下降→戻り→下降)からなる値動きのサイクル
  • 上昇第1波の調整波は、第1波の始点を下抜けることはない
  • 上昇第2波が最も短くなることはない
  • 上昇第2波の調整波が第1波の価格帯に割り込むことはない

 これらの条件に当てはまる高値と安値を探す必要があります。特に目立つ反落・反騰ポイントは、エリオット波動の起点となりえますので、注意して探してみましょう。

バイナリーオプションでエリオット波動を活用する

 このエリオット波動は、果たしてバイナリーオプションで活用できるインジケーターなのでしょうか。

 結論をいえば、バイナリーオプションの大本となったFXにおいても、やや上級者向けのインジケーターとされているように、バイナリーオプションでもしっかりと活用するのは非常に難しいと考えられます。

 この原因の1つとして、エリオット波動がフラクタル構造を有している点が挙げられます。

 フラクタル構造とは、ミクロ視点とマクロ視点、双方で見たときに同じ構造をしているもののこと。エリオット波動の第1波の中には小さなエリオット波動が形成され、その内側には更に小さなエリオット波動が……といった具合に、ある種マトリョーショカ的な構造になっているとお考えください。

 でも、バイナリーオプションのための分析で用いているローソク足チャートだけを考えればいいのでは、と思われるかも知れません。確かに一面的にはそのとおりですが、もし超短期取引において、エントリーしたタイミングが、より小さいエリオット波動の上昇第3波の終端であった場合は?

 当然、予測に反してレートは下降を始め、予測を外すことになりかねません。

 理由は他にもあります。これがエリオット波動が上級者向けといわれる所以でもありますが、上昇波が終わって調整が入ったと判断したポイントが、実はまだ上昇波の途中であったことがある為です。

 この場合は、順張りでエントリーしている場合は影響はそれほどないと思われますが、逆張りでのエントリーの場合、やはりこれも予測を外す可能性が出てきます。

 他のインジケーターに対する知識や理解がない中で、いきなりエリオット波動を用いようとするのはオススメできません。まずは移動平均線など基本的なインジケーターへの理解を深めて、それから挑んでみても、決して遅くはありません。

 他のインジケーターにおいても、予測に反した動きを見せることは当然あります。

 それでも用いるのなら、少なくともフィボナッチリトレースメントとの併用を検討したほうがいいでしょう。

まとめ

  • エリオット波動はフィボナッチ数を用いたテクニカル分析のインジケーター
  • 他のインジケーターと比べ上級者向け
  • 使用時はフィボナッチリトレースメントとの併用を推奨

 今回ご紹介したのは、エリオット波動の基本的な内容のみにとどめています。エリオット波動を突き詰めていけば、トレンド相場やレンジ相場の反転やブレイクに通じる部分が出てきます。

 エリオット波動を自動的に表示する機能は、MT5にもMT4にもありません。MT5には『インジケーター→カスタム』内に『ZigZag』という項目がありますが、これだけでエリオット波動を見つけるのは難しいです。

 ただし、MT5なら手動でエリオット波動の起点となるポイントをマークすることならできます。フィボナッチリトレースメントも実装されていますので、分析の際には活用してみてはいかがでしょうか。

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